まだ本格的寒さが訪れる前の小春日和の11月の末。
いつも行くギャラリーへと脚を運ぶと。
ん?
最近よく来るヤツね。
ハイ。
ちょっとそろそろ常連と認定して案内するとしますかにゃ。
くるり。
へ?
ずんずん。
ひょい。
あの、そこはくぐれないですけど。
あ、外側から回ればいいのか。
すたすたすた。
あ、ここにもイケニャンさん。
おばさまが猫さんと戯れていました。
このおばさまの飼い猫ではないけれど、
よくここでいろんな方々に愛想をふりまいている
チャコちゃんとミーちゃん。
このコたちを愛でながら、おばさまから伺った話。
おばさまと7年前に亡くなったハッピーちゃんのお話。
おばさまは目下85歳。
ある日、アビシニアンミックスの人懐こい女の子に出会った。
カワイイなあと思ったものの、勤め人だったから日中は留守だし、面倒は見られない。
どこかいいお家にもらわれます様にと思ってそんな地域に連れていったそうです。
賢いコだったから苦労しながらなんとかうまく撒いて、後ろ髪を引かれる想いでその場を立ち去ったそうです。
さて、翌日。
おばさまがドアをあけると。
置き去りにしてきたはずのコが
きちーーーんと前脚を揃えたくらいにしてドアの前に座っていたそうです。
そこそこ距離もあったはずなのに。
腹を決めたおばさま、その日はお休みをとって一緒に暮らす準備に費やしたのでした。
一緒に暮らす際の約束ごとなどもこんこんと言い聞かせたそうです。
最初の頃からこうやっていつも対話していたんですね。
外国の猫ちゃんの様に人のトイレで用足ししようとしたり、外車の匂いをクンクンしたりするから、きっと母国に帰る外人さんに捨てられたのかもしれません。
ハッピーちゃんと名付けて、専ら室内で飼うことにしました。
七年前に二十一歳で亡くなったハッピーちゃんでしたが、病気らしい病気にはかからなかったそうです。
一方、おばさまは、肺炎で緊急入院したりと、健康に自信が持てない年齢にさしかきってきました。
退院後、
『ハッピーちゃん、お母さんはずっとハッピーちゃんを養っていけるか不安になってきちゃったよ』
いつもの様におばさまの話をじっと聞いていたハッピーちゃん。
ある日、ハッピーがご飯を食べなくなってしまいました。
大好きなお魚も食べようとしません。
入院させて点滴をうってもらって。
ある日おばさまが面会に行ってのませてあげたお水が末期のお水。
原因は肺炎だったそうです。
きっとハッピーちゃんが、おばさまの事を案じて病気を持って旅だったのでしょう。偶然といえばそれまでですが、長く一緒に暮らした間柄にはありうる話のようでもあります。
あれからミーちゃん、チャコちゃんたちには会うけれど、おばさまには再会できないまま。
さてはあのおばさまはとにゃりんの化身だったか。
みなさまもカワイイ猫ちゃんたちと良いお年を。